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調査・研究

高等学校におけるアダプティブラーニング実証実験の経過レポート 〜苦手克服レコメンドの活用パターンを可視化〜

2016. 10. 2

本年度よりリクルート次世代教育研究院(院長:小宮山利恵子)が実施している『アダプティブラーニング実証実験』の進捗をご報告いたします。

アダプティブラーニング実証実験について

本実証実験では『スタディサプリ高校講座・スタディサプリ大学受験講座』(https://studysapuri.jp/)導入校にご協力いただき、公教育の現場におけるアダプティブラーニングの有効性を検証しています。

日々のカリキュラム・学事の中で生徒一人ひとりのつまづきを把握し、個別に指導を行うことは先生方にとって大きな負担です。今回アダプティブラーニングによる効率的な学習の実現を目指すため、定期的に『スタディサプリ』のドリル解答ログを分析し、個々の苦手を克服するのに一番有効であると思われる講義を『レコメンド講義』として生徒に配布いたしました。

  • 実施校数:高等学校5校(『スタディサプリ』導入校)
  • 期間:2016年4月より順次
  • レコメンド講義配布頻度 : およそ2週間おきに各5講義
  • 対象教科:英語・数学

定期的なレコメンドで自身の学力を把握、80%の生徒が苦手の克服に役立つと回答

実証実験を開始して3ヶ月が経過した時点でレコメンド講義に関する中間アンケート(対象は協力校一校の高校1年生5クラス)を実施したところ、およそ5割(49.67%)の生徒が『これをやれば良いと明確になった』と回答しています。回答の理由として『わからなかったところがわかった』『自分が苦手なことがわかった』『改めて、自分の立場を確認したから』などが挙げられており、レコメンド講義が単なる課題ではなく現状把握をするためのリファレンスとして役立っていることがわかりました。

続いて『危機感を感じた』(16.99%)『やる気になった』(13.07%)と多くの生徒が学事の中でレコメンド講義を受け取ることに好意的な印象を抱いている一方で、『やる気にならなかった』という回答は 15.03% にとどまりました。

またレコメンドされた講義内容についても『苦手な部分を復習するのに役立った』と答えた生徒は約8割(79.02%)という一方で『すでに理解している内容だった』と回答された方は 20.98% となり、更なる精度の向上が求められるものの苦手を克服するためのまなび直しに寄与していることがうかがえます。

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上記のアンケートの回答をもとに母集団を分割し、平均的な学習量の変遷をグラフに表したものが下図になります(上段は生徒一人が1日あたりに解答したドリルの設問数・または動画を視聴した時間の平均値。下段は相対比較をするために期間毎に標準化をした値)。『レコメンド実施前』は初回のレコメンド講義を送付する前の期間、『レコメンド実施後』は初回のレコメンド講義を送付した後の期間でこの間、定期的にレコメンド講義が配布されています(集計した学習量はレコメンド講義とレコメンド講義以外のものの双方の学習内容を含みます)。

ドリルの取り組みについては、夏休みの宿題が要因となって『危機感を感じた』群などの学習量が一時的に増える傾向にあります。一方、『やる気になった』群は夏休み前半のやや早い時期にも学習に取り組み、夏休みが明けてからもレコメンド実施前より学習量がやや増えています。

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レコメンド講義の活用率を可視化、学習行動のパターンを期間別に分析

下図は実際に学習された内容におけるレコメンド講義の比率を表したものです。縦軸がドリル解答数におけるレコメンド講義の比率、横軸が動画視聴時間におけるレコメンド講義の比率を示します。また円の大きさはレコメンド講義を含めた全ての講義にひもづくドリル解答数を表しています。

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まず全体的な傾向として、学習量の少ない(円が小さい)生徒の一部にレコメンドされた講義のみ勉強しているパターンが散見されます。夏休み明けに全体的な学習量が落ちている一方、『これをやれば良いと明確になった』『やる気になった』と回答した内の一定数の生徒がレコメンド講義に沿って学習を続けています。

一方、学習量が多い(円が大きい)生徒はおおよそ全体の学習量に対して3割から5割程度、レコメンド講義を活用しています。夏休み明けに見られる特徴的な傾向としては『これをやれば良いと明確になった』と回答された生徒はレコメンドされた講義のドリルに取り組んでいる(縦軸に分布が伸びている)のに対し、『やる気になった』と回答された生徒は動画を視聴している(横軸に分布が伸びている)点です。

『これをやれば良いと明確になった』生徒はまずドリルに取り組んで自身の理解度を確認するのに対し、『やる気になった』生徒は講義を受講してまなび直そうという姿勢があるという仮説も考えられ、この点については引き続き検証を続けていく予定です。

本実証実験は本年度(平成28年度)末まで継続することを予定しており、定期的なレコメンド講義の配布による学習姿勢の変容や学力の向上に関する効果について分析と検証をしていきます。

 

※実証実験に関するお問い合わせはサイト下部『お問い合わせ』よりご連絡ください。