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調査・研究

高等学校におけるアダプティブラーニング実証実験の経過レポート 〜学習ログを活用した講義レコメンドで生徒の成績が向上〜

2017. 2. 6

レコメンド講義の活用度合いと偏差値の推移の関係性を調査

前回のレポートではスタディサプリの学習ログからつまづきを検出し、まなびを進める前に一度復習するべき講義を生徒一人一人に提示する『苦手克服レコメンド』をご紹介いたしました。このアダプティブラーニング実証実験において、レコメンドされた講義を活用した学習が生徒の成績にどのような影響を与えるかを評価しましたのでご報告させていただきます。

本評価における集計対象は下記の通りです。

  • 対象校:アダプティブラーニング実証実験に参画している高等学校5校
  • 対象学年:対象校に在籍する高校1年生の生徒615名
  • 教科:数学・英語
  • 成績データ:スタディサプリ導入校にて春と秋に実施される『スタディサプリ到達度テスト』の得点から偏差値を算出。実証実験開始前の春から実験開始後の秋にかけての偏差値の推移を測定。
  • 学習状況モニタリング対象期間:2016年5月1日 ~ 2016年10月31日

レコメンドされた講義でまなび直しを行った群の全てにおいて数学・英語ともに成績が向上

各生徒の学習時間(スタディサプリの講義動画視聴時間)に対してレコメンド講義を視聴した時間の割合と、春から秋にかけての偏差値の変化量の対応を示したのが下図になります。

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レコメンド講義を全く受講しなかった群の偏差値が平均で0.4ポイント低下しているのに対し、レコメンド講義を受講した群はいずれも成績を上げていることがわかります。

最も伸びたのが『25%未満の比率でレコメンド講義を受講した』群の0.78ポイントで、学習時間に対するレコメンド講義の比率と成績の変化量に有意な相関は見られませんでした。これは今回の苦手克服レコメンドが学習の振り返りを促すものであり、授業に沿った通常の学習との時間配分の適切な割合が個々の生徒で異なることが要因の一つと考えられます。

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英語に関しても最大で0.44ポイントの向上と数学ほどの効果は認められませんでしたが、レコメンド講義を受講しなかった群が偏差値を下げている一方で受講した群はいずれも成績の改善が見られました。

教科間の違いを考察すると、数学は単元の難易度が複層的でかつ前後関係を構造化しやすいのに対し、英語は依存関係の薄いフラットなモデルとなるため本手法の効果が顕著には現れにくい可能性があります。この点については本手法で用いた依存関係の強い単元のまなび直しだけでなく、つまづいた箇所の復習を定期的に促すなど教科ごとにレコメンドのバリエーションやロジックの重み付けを変えるなどのアプローチが必要であると考えております。

およそ半数以上の生徒がレコメンド講義によって成績が向上

成績が向上した生徒の割合を見てみると、数学ではレコメンド講義の学習比率が上がるにつれ成績が向上した生徒の割合も上がっていることが確認できました。

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レコメンド講義を全く受講していない群と比較して、数学では最高で8.86%の生徒の成績の向上が認められたことからも個々の生徒それぞれにに有用なまなび直しを提供できている可能性が示唆されていると考えられます。

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英語に関しては全学習時間に対して25%~50%の比率でレコメンド講義を受講した生徒の群が、唯一レコメンド講義を受講していない群に比べて0.83%程度ポイントを落としているものの、その他の群ではベースラインを上回る結果となりました。

教科間の差異を考慮した、より多様なアダプティブラーニングの可能性の追求へ

本実証実験では一斉学習におけるつまづきの解消を目的に、単純な復習ではなくその単元を構成する要素のまなび直しを勧めることで根本的な理解の醸成を試みてきました。今回の評価によってレコメンド講義を受講した生徒に成績向上の傾向が見られたことからその有用性が示唆されたと考えられますが、一方で数学と英語の教科間の差異も明確になりました。

リクルート次世代教育研究院では今回の実証実験の結果を踏まえ、各教科における単元間ネットワーク構造の解明や、反復学習や先取り学習といったまなび直しだけではないアダプティブラーニングについても引き続き研究していく予定です。