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調査・研究

タブレット教材を活用したとき「山村留学生」の学習意欲はどう変化したか

2021. 3. 2
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レポート担当者: 姜 潤華 / 難波 いくみ

 

山間部の小さな学校で、個別最適化学習の実現のために『スタディサプリ』を利用

美深町立仁宇布小学校・中学校(北海道)では、全校児童・生徒23名のうち14名が国内各地から進学してきた「山村留学生」です。

2020年度、子どもたちの学びを支えるために、仁宇布自治会が予算を捻出し、児童・生徒全員がスタディサプリを用い学ぶことのできる環境を実現しました(その後、町の公的な補助金も活用しての整備に至りました)。ドリルだけでなく授業動画も備えたスタディサプリは、学年を超えて学び直し、先取り学習に利用することができることから、児童・生徒一人ひとりにあわせた学習環境の実現に最適だと判断したもので、2021年度も継続して利用予定です。そこには、美深に暮らす子どもたちに一人ひとりに合った学びの機会を持ってほしい、そして自信を深めて、学びの意欲を高めていってほしいという、仁宇布地区の大人たちの思いが込められています。

 

物理的に抱えざるをえなかった教育課題

一般的に、山村留学を選択する児童・生徒には、同じ地域に集まった同士の中にあっても、各地区・前在籍校での学習の進度や深度、定着度、学習習慣にばらつきが大きい、ということが特徴として挙げられます。また、前籍校での欠席等、学習空白期間を抱えている場合もあります。また、仁宇布地区は、美深町中心部から25km離れた重度へき地であり(中間20kmは人家なし)、大自然に囲まれた環境であるがゆえに、塾・予備校に通うのが物理的に困難です。さらに、仁宇布地区からの文化的施設までの距離は遠いため、知的な刺激、学習意欲の醸成や維持がしにくいという課題も抱えています。

 

タブレット教材を活用する狙いはどこにあるのか

美深町立仁宇布小中学校では、入学当初に学習の遅れがある児童・生徒であっても、あるいはそうではない児童・生徒であっても、大自然の中で健康に過ごし、将来の夢や目標実現のために都市部や首都圏に暮らす子どもたちたちと同等以上の学びや進学の実現を図り、学びの質や学力を向上させるため、「教育にへき地なし」を合言葉に日々の教育活動に取り組んでいます。

また、仁宇布中学校では、多くの生徒が寮生活を送っています。保護者の目が届かない状況でも、生徒自身が積極的で自律的な学習を行うための最適な環境を提供しており、そのひとつがスタディサプリの利用です。スタディサプリにより、講座の動画やドリルを用いて一人ひとりが自身の学習進度に合わせ、ときには学年を超えて学び直しや先取り学習を行うことができています。

いまや校内には「放課後勉強部(ニウプサプリ)」も発足し、子どもたちが自発的にスタディサプリに取り組んでいる姿も多く見られるようになってきています。

 

美深町仁宇布地区の取組みはなぜ先進的で、今後全国に広まって欲しいモデルなのか

美深の取組みは、下記の点で、固有性、そして子どもの目線に立った新たな兆しを包含していると考えています。

・宿題といった強制力のもと学習に向かわせるのではなく、児童・生徒一人ひとりの興味・関心にそった学習機会を提供・実現していること

・学びにかかる費用についても、学習機会の保証を地域の課題として捉え、学校や個人の負担とするのではなく、仁宇布自治会の地域振興費用を充当することで等しく機会を設けていること

・へき地の学校が普遍的に抱える課題「児童・生徒数の減少」対策として、子どもたちの学びの選択肢を増やし、学校や子どもを中心に捉えた地域一体の活動に取り組んでいること

・取組みは学校での教育課程内に留まらず、学校と自治会の協働のもと、美深の大自然をいかした川下りやノルディックスキー遠足、じゃがいもの収穫体験など、様々な学びの機会を提供していること

 

関係者のお声

美深町仁宇布地区自治会長である野村政弘様より頂戴したお声を紹介します。

「想像を超えた雄々しい仁宇布の大自然の中で得られる体験、子どもたちをわけ隔て無く支援する地域の方たちから得られる心身の健康と成長、地域と学校の強いつながりによって、児童・生徒一人ひとりに寄り添った教育環境が仁宇布にはあります。

そこにスタディサプリを導入することで、首都圏・都市部同様の学力をつけられるという強い安心感が持てるようになりました。学習で追いつきたい、追い越したい、都会では難しい夢を叶えたい、今までできなかったことができるようになりたい、一生語れる体験をしたい・・・、様々な願いを持つ児童・生徒の皆さんを自信持って育て、巣立てる環境が仁宇布にはあります。ユニークでスタンダードな教育(個性的であっても日本の標準的な教育からは外れない)を提供し、子どもたちを地域全体で育てていきたいと考えています」

 

 

スタディサプリ教育AI研究所としても、こうした子ども目線に立脚した取組みを、継続して支援すべく、今後も取組んでまいります。