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調査・研究

アダプティブラーニング実証実験の結果と今後の展開

2017. 3. 26

大規模なアダプティブラーニング実証実験を実施

弊社及び研究院では、学習の個別最適化の重要課題とされる「アダプティブラーニング」の実証実験を2016年3月より約1年に渡り進め、進捗や成果を随時情報共有してきましたが、改めて最終結果として情報提供させていただきます。

今回のアダプティブラーニング実証実験の実証対象は、小学校10、中学校18、教育系NPO等14、高校6の合計48の教育現場。小中高校全ての階層においてスタディサプリの学習ログを活用し、個々の学習者の学習状況及び理解度状況アルゴリズムを判別、それぞれの理解が足りていない“根源的な原因”となる部分(単元、講義、問題)を見つけ出します。特定させた部分を学習者それぞれに「苦手克服レコメンド講義」として提供、学習者個人にとっては “今、この瞬間に学習しておくべき講義” という認識で受け取ることができるようになります。

この “今、この瞬間に学習しておくべき講義” という意味がアダプティブラーニングにとって重要なポイントとなります。学習者は講義を受け、問題を解いた時に点数が悪ければ「自分はこの講義は理解していないな」というのはわかります。しかし「それがなぜ理解できていないのか?」「何がわかるとそれがわかるようになるのか?」という原因まではわかりません。そして学校の授業では復習する時間もなくどんどん次の単元へ授業が進んでいくので、落ちこぼれる生徒がリカバリーすることが非常に難しいのです。

それに対して我々の提供する「苦手克服レコメンド」により、「今、この講義を勉強すれば良い」「やりさえすればできるようになる」という意識の醸成、やる気の向上、学力の定着、落ちこぼれ防止を実現することができるようになります。以下、実証実験概要です。

  • レコメンド提供期間:2016年5月〜2017年3月(約10ヶ月間)
  • 提供校:全48(小学校10、中学校18、高校6、NPO・教育委員会等14)
  • 提供人数:約2,700人(小中学校約1,700人、高校約1,000人)
  • 教科:小学生算数、中学生数学・算数、高校生数学・英語

効果検証方法は、「学習量が同じ程度で、レコメンド利用比率の高低により成績向上に差が生じるか?」という観点で検証しています。対象となる学校のうち学校の定期テストや模試などのテスト成績を、個人情報観点でマスキングを施したのち情報提供可能な学校から情報を取得し、スタディサプリの学習ログと統合させて「効率的に学習したことで成績の変化にどのように反映されたか?」というあえて学習環境を恣意的に整えることなく検証を行いました。

以下、中学・高校の2つの効果検証を紹介しますが、提供される情報が異なるため検証する軸は異なることは了承していただきたいと思います。

アダプティブレコメンドにより効率的な成績向上を実現

レコメンド実施前後の成績変化量(中学生)

詳細URL:https://ring.education/research/grade_up1/

ある中学校におけるレコメンド実施前と後で、縦軸は定期テストの成績が上がった人の割合を示しています。青がレコメンド未実施者、オレンジがレコメンド実施者となっていますが、一番右の棒グラフを見るとレコメンド実施者が成績上昇者割合が60%を超え、未実施者は40%程度に止まっています(合計で50%を超えるのは、同学年でそもそもレコメンド対象外の生徒が存在するため)。前提としてこの学校においては基本的に学事においてスタディサプリを利用しており、全体的に学習時間に大きな差が生じていないことからすると、レコメンド実施することにより同じ学習時間において効率的に成績が伸びたと考察することができます。

また左3本の棒グラフは、レコメンド実施前の学内成績を三等分したセグメントに対する成績の変化を見ていますが、成績中位が実施未実施者の成績の差が顕著に見られ、次いで上位、そして成績下位においてはあまり差が見られていないことがわかります。この現状を現場の先生と議論したところ、成績中位以上の生徒は自主的にレコメンド講義に取り組む姿勢を持っており、その結果が表れたのではないかという意見をいただきました。また成績上位はそもそも上位であり伸び代がないこともあるためやや順位の伸びは見えづらいことも要因としてあるでしょう。

一方、成績下位の生徒は能動的に学習に取り組む習慣がないため、先生の後押しがないとなかなか学習が進まない、かつレコメンドなどの示唆に興味を示さない傾向があるのではないか?という指摘も生まれました。

積み上げ型教科(数学)においてアダプティブレコメンドの効果が顕著に表れる

レコメンド実施比率別の偏差値の変化量(高校生)

詳細URL:https://ring.education/research/2016_hs_al_experiment_report_02/

続いてある高校における結果を挙げます。レコメンド実施前後において弊社が全国の高校で実施している「到達度テスト」における全国偏差値の伸びを検証結果に用いており、縦軸は偏差値のレコメンド実施前後差、横軸はスタディサプリの学習総時間に対するレコメンド実施比率で4つのセグメントに分け、左から0%(未実施)、0〜30%、30〜70%、70〜100%となっています。

注目したいのは、数学における偏差値の伸びがレコメンド比率が上昇するほど大きくなっているところです。各セグメント同程度の人数と同程度の学習時間が前提となっているため、レコメンドを実施することで効果的に成績を伸ばすことができたことがわかります。また積み上げ型の数学(下段グラフ)の方が英語(上段グラフ)より傾向が顕著に見られることで、我々の提供した適切な戻り先講義の提供がうまく行ったことが証明されたとみています。ただ英語は各セグメントでの人数と学習時間にばらつきがあるため一概にこの結果を正とすることも難しいと感じており、さならる検証が必要だと考えています。

アダプティブラーニングを学校教育シーンへ

上述した実証実験結果は一例ですが、約10ヶ月間に渡り実施してきたアダプティブラーニング実証実験が好結果を生み出すことができたと言えます。そしてこのアルゴリズムの性能をさらに上げると同時に全国の学校で展開していきたいと考えており、すでに高校数校からの打診を受けている状態です。また高校生向けのレコメンドアルゴリズムは前述の「到達度テスト」の結果から得られる復習講義とも連携しており、学校教育シーンにおいてテストと復習のアダプティブな学習サイクルを提供できるようにしています。