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調査・研究

ビックデータによる学習パスと有識者による学習パスの比較

2016. 9. 6

ビックデータによる学習パスと有識者による学習パスの比較

【背景】

ICTの普及により教育が学校や塾のみならず、いつでもどこでも誰でも学べる環境が整いつつあります。また学校でも従来の教育の補助として朝学習や放課後においてICT教育が活用され始めています。
ICT教育においては環境を提供するだけでなく、それを活用することが重要であり、それを促進させる1つの方法として学習者の学習状況に応じて次に何を学ぶべきかを提示し学習者1人ひとりに個別学習を提供することが重要であると考えています。
弊社サービス「スタディサプリ小学講座・中学講座」に蓄積されている学習データを用いて、講義間での繋がりパスを作成し、これを用いて次に何を学ぶべきかを提示し学習者1人ひとりに個別学習を提供できるサービスを開発しています。本調査ではデータ解析から作成された講義間でのつながりと有識者作成による講義間でのつながりを比較して、どのような差異があるかをご報告いたします。

【結果の概要】

有識者作成パスとビッグデータ解析から作成されたパスを比較した結果、同学年内のパスの一致率は74%と非常に高い数値となり、データ解析によって有識者の知見を再現することができることが証明されました。
さらにビックデータ解析から作成されたパスは有識者の作成したパスの約3倍のパスを引いており、人間が見落としがちな関係性の強いパスも生成できたと考えられています。

【詳細】

ネットワーク
図の○(ノード)はスタディサプリ小学講座・中学講座の算数の各講義を示しており、赤○は小4,緑○は小5,青○は小6の講義になります。
→は学び順になっており、→の終点の講義を学ぶためには始点の講義が必要であるという見方になります。

青→は有識者とビックデータ共に引いたもの、緑→が有識者のみが引いたもの、黒→がビックデータのみが引いたものになります。
有識者のパスを分母に置いた場合のビックデータの重なり率は全体で58%になっています。
一致しない箇所(緑→)は学年を跨ぐパスにおいて顕著に出ています。これはビックデータによるパス作成において精度だけではなく、信頼性(多くの人が終点の講義をやるために始点の講義を解いていること)を制約とおいており、スタディサプリ小学講座・中学講座はスタートして1年半程度なので、学年を跨いで勉強するデータ数が多くないことが原因と考えられます。今後データが蓄積されていくと学年跨ぎのパスも一致率が向上することが期待できます。

一方で同学年内のパスの一致率は74%と非常に高い数値となり、データ解析によって有識者の知見を再現することができることが証明されました。
※一致率
有識者の引いたパスを母数に置いた場合、データの引いたパスがそれをどれくらい再現できているかの率になります。同学年内で有識者の引いたパスは61通りの組み合わせ数があり、そのうちの45通りをデータの引いたパスが再現できているため、一致率74%となっております。

加えて有識者の引いたパスが全部で77通りあるのに対して、データの引いたパスが247通りと約3倍のパスを引いており、人間が見落としがちな関係性の強いパスも引いている場合もあります。

・中2数学基礎講座の講義「連立方程式の利用(2)」に必要な前提授業
前提講義一例

【今後の展望】

上記の結果は、「有識者だけのパス図のみでよい」、「ビックデータ解析のパス図のみでよい」という議論でなく、有識者とビッグデータ解析を掛け合わせたハイブリット型のパス図を活用していくことでより良質な個別学習を提供できると考えております。
サービスの提供方法としては苦手なものを克服できる個別学習と得意なものを更に伸ばしていく個別学習などが考えられます。どちらの個別学習を促進させると成績が伸びるのかを検証することも今後検証していきます。

著者:中西 慶彰
株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
まなび事業本部 オンラインラーニング事業推進室
2008年筑波大学大学院修了。同年SIerに入社し、BIのシステム提案、構築とさまざまなクライアントのWebサイト分析に従事。2015年6月株式会社リクルートマーケティングパートナーズに入社し、スタディサプリ小学講座・中学講座(旧勉強サプリ)の分析を担当。子供の学び方をデータ分析によって解明中。